すべてはあの花のために③


 ようやく腕を放してくれた二人は、頭をガシガシ。なんだか話したくない様子。


「あー……多分だぞ? 真っ先に行った二人は、あいつに惚れ込んでんじゃん?」

「ほう。自分たちはそうではないと」


 キサの指摘にぴくっと肩を揺らし、二人はそっぽを向く。


「あの三人もなんだかんだで、あいつ好きじゃん。だから、いつでも攻められるように陰で動いてやるって、そういうことだと思う」

「そうか。みんなの気持ちが落ち込んでないならいいや。……それだったら二人は、なんであたしを送ってくれるんだ?」


 きっと二人も、さっき何があったのか知りたくてたまらないんだろうけれど。


「……オレらガチで眠ぃんだよ」

「そう。超寝不足」

「どうして? 一緒のタイミングで布団入らなかったっけ?」


 顔色が悪い理由はわかった。けれど、そう尋ねると二人は目を合わせた後、大きなため息をつく。


「お前は先に寝たから知らないだろうけど、他の奴らはあいつんとこに行こうとしてたんだよ」

「だからオレらが一晩中見張ってたの。だから寝てないの。だから眠いの。わかった?」


 二人はそう言って肩を落としながらトボトボ……と歩いて行く。


「……だから朝、またお風呂に入ったと」

「そういうこと。まあ入ったのは別々だけど」

「眠気覚ましに。でもやっぱり朝方少し寝ただけじゃ足りないから、12時までは寝てくるよ」


 そう言った二人は同時に欠伸をしていた。
 よっぽど神経使っていたんだろう。お疲れの様子だ。


「(だがしかし、ここで納得するキサ様ではないのだっ!)」


 こほんと小さく咳払いをして問い掛ける。


「それで? あたしを送ってくれる本当の理由は何かな。弟1号2号?」


 キサがそう尋ねると、二人はまた照れくさそうにそっぽを向いた。


「……ッ。そんなん、決まってんだろ」

「てか、いちいち話すわけないでしょ」


 二人はかろうじてそう言ってスタスタ歩く。


「ふふ。可愛い奴らめ」


 キサは前を歩く二人のちょっと、小さくなっている背中を見て、思わずクスッと笑ってしまった。