「大人で格好いいなと思いました! 以上!」
葵は「それじゃあ13時に駅でね~」と言い残し、ダッシュで家へ帰っていった。
駅で葵の捨て台詞を聞いたメンバーは、しばらく固まったまま動けなかった。キサはというと「あれま~」っと言いながら、固まったみんなの前で手を振ってみたり、チカゼに対しては蹴りを入れたりしていた。
「もうっ。しょうがないなあ」
キサがパンッと手を叩き、「はーい。ちょっとしゅーごー」と合図をかける。落ち込んだ様子のみんなはズルズルと集まった。
「はーい。どうしてそんなに落ち込んでいるんですかー」
キサはマイクを持っているかのようにカナデへ手を向ける。
「アオイちゃんがマサキを格好いいって言ったからー……」
キサはペシンと頭を叩いた。「へ?」って顔になったまま止まったカナデを放って、今度はアキラへ同じようにマイクを向ける。
「葵が、大人で格好いいって言ったから……」
キサは、ペちっとおでこを叩く。「俺との差?!」と文句を言うカナデは最早、キサの眼中になかった。
「……だから?」
キサはみんなに怒っていたから。
「お前らはあっちゃんに格好いいって思われたいんか?」
みんなはコクコク頷く。
頷いたみんなの頭を順番にペシペシと叩いて回る。
「お前らが大人な男になろうだなんて、一生無理じゃい!」
明らかに落ち込む彼らに、「よく聞けお前ら。……ごほん」と、キサは咳払いして続ける。
「えー君たちは、同年代の人たちに比べると、外面はまあ大人かもしれない。しかし内面はすっごく子どもっぽい。ずっと一緒にいたあたしが言うんだ。間違いない」
キサが何かを喋る度に、みんなはしゅんと小さくなった。
「そんな人たちが周りにいるとな? どうしても大人な男性の魅力でときめいてしまうこともある! あたしが典型的な例だ!」
そうですね。よかったねキクゲットできてと、みんなは心の中で思った。
「でもあっちゃんは、格好いいって言っただけだから!」
キサは人差し指を立て、みんなに言い聞かせている。
「格好いい人が好きだとは言っていないのです。男としては格好いいと言われたいのでしょうが、残念ながらあっちゃんが好きなものは……そう! 可愛いものです!」
キサがそう言うと、みんなは顔つきが変わってくる。
「別に、可愛くなれとは言ってないぞ? もちろん格好よくなれとも。それぞれいいとこがあるんだから、そこで勝負すればいいでしょうって話。目標は、格好いいって言われること? そうじゃなくて、あっちゃんに好きって思ってもらうことでしょう。だったら早く追いかけて、取り敢えず家まで送ってくるぐらいのことはしなさい!」



