すべてはあの花のために③


 お世話になった五十嵐組の方々へ深くお詫びと感謝を告げ、一時帰宅することに。
 最寄り駅までマサキが車で送ってくれることになったが、車の中では何故かみんな一言もしゃべらないし、葵から頑張って距離を取って座っていた。

 駅に着いて車から降りた後、葵は改めて運転席に座っているマサキにお礼を言いに行った。


「マサキさん、今回は本当にありがとうございました」

「へあ?! あ、……ああ。ぜ、全然っ⁉︎ きっ、気にせんで、ええでっ⁉︎」

「さっきのはわたしとシオンさんの演技なんで、そんなに怖がられると寂しいんですけど……」

「へ? そ、そうなん?」


 明らかに彼はホッとした表情になった。


「ありがとうはこっちの台詞や。ほんま、葵ちゃんでよかった」

「そう言ってもらえて、わたしも嬉しいです」


 それじゃあと言って離れようとしたら、マサキに腕を掴まれる。


「……マサキさん?」

「葵ちゃんのこと好きやけど、俺のは恋愛やないからな。せやから、本気のあいつにはちゃんと応えてやってな」

「はい。もちろんですよ」

「そうか。それならええ。……それと、もう一つや」


 そう言って彼は葵をぐっと引き寄せ、耳元で話す。


「多分やけど、またつけられとるで」

「――!」


 振り向こうとした葵の頭は、ぐっと抱えるように引き寄せられた。


「わからんけどな。でもなんや、嫌~な感じや」

「……はい。そうなんです」

「気ぃつけや。これは俺らなんかよりも、もっと厄介な奴かもしれんで」

「……忠告、ありがとうございます」


 緩んだ力に、葵はそっとマサキから離れる。


「なんかあったら言いや。俺らが守ったるさかい」


 そう言って彼は片手を上げた後、車を走らせていった。