「シオンさん。ありがとうございます。……わざと、そう言ってくださったのでしょう?」
彼は何も言わなかった。
でも、葵から目は逸らさない。
「吹っ飛ばしてしまって、ごめんなさい。でも、つけられたら流石のわたしでも気づきますって」
「ははっ。そっか」
「体張ってくださってありがとうございます。これできっとこれ以上彼らは聞いてきませんし、カナデくんともギクシャクしないと思います。というか逆に会話が弾みますね? どうやって防ぐのーとか」
「あはっ。うん。そんな気がするよ、あいつなら」
「……痛かったですか?」
「ううん? 受け身は取ったから全然平気」
「そうですか。……本当に、今回はありがとうございました。そろそろ戻りますね」
「はーいこちらこそ。俺のこともすくってくれてありがとう」
葵は一瞬目を見張って、すぐににっこり笑った。
「おいバカ親父? いくらカナデくんの父親でも許せることと許せないことがありますよ」
葵はバキボキ指を鳴らしながら彼を見下ろす。
「え、えー……。そんなに怒らなくってもー……」
どうやら彼も演技派のようだ。怖がっている感じがとっても上手。
(※実は本気でビビっていたりします)
「あ、アオイちゃん? もうその辺に――」
「よく聞きなさいバカ親父。こんなこと一生すんじゃねえぞ。次やったら今のじゃ済まない」
そうして葵は自分の席について、冷めてしまった朝食を美味しく戴きました。
そしてその場の全員が、このことについては『もう触れまい』と、心に誓ったのでした。



