すべてはあの花のために③


 そう言うと、そっとやさしく腰を引かれ、ふわりと軽く抱き締められる。
 き、君ってこんなことするような男だったっけ?! と動揺していると、「トーマがしたくてもできないから、その代わり」と。流石は似たもの同士。

 何だか気が抜けた葵は、ヒナタの肩に頭を乗せた。


「(なんか、君から近づいて来られるの新鮮……)」


 そう思っていたら、「あのさ」と声を掛けられた。


「この間は、ごめん」


 一体何の話をするのかと思って構えていたら、何故か謝られた。いつの、何のことかわからず、葵の頭の中はハテナでいっぱい。


「言い方。キツかったと思って」

「えっと。いつもだと思うんですけど」

「……カナに、『言い方考えろ』って言われたから」

「!」


 あの時のか。確かに彼に、相談に乗ってもらったけど……カナデも、葵に近づけないなりに、見えないところで気を遣ってくれていたらしい。


「……うんっ。ぜんぜん、だいじょうぶ、だよ?」

「そ。それなら、いいけど」


 本当に彼は、それ以上のことは話さなかった。「ただ、本当にそういう話をするのが嫌だったから」とか「泣いたの?」とか「……ごめん」とか、そういうことしか話さなくて。「ううん。気にしてないよ? 大丈夫だよ?」と葵も返すだけ。

 それから次の人が来るまで、ヒナタも葵の肩に頭を置いていた。今までは少し距離感が掴めなかったのに、カナデのおかげで、ヒナタのおかげで、そんなのはもうどうでもよくなった。

 その後は、「ん」とか、「うん?」とか、「ううん」とか。ちゃんと言葉は話さなかったけど、なんだかとっても楽しかった。

 そうしていると、生徒会室の扉がノックされたので、二人してバッと慌てて離れる。


「おっと。仕事中だったね」

「そうだね」


 至って普通に返してきて若干むっとしたが、どうやら扉を開けに行ってくれるらしい。そこにはウサギさんが立っていた。


「(襲わない自信がないぃ~……)」


 そんなことを思っていると、ヒナタがオウリに何か言ったのか、悪戯っ子な笑みを浮かべて部屋から出て行った。


「(え? どうしたんだろう)」


 オウリが固まったまま、入り口から動かない。


「お、オウリく~ん?」


 ちょっと控えめに呼んだら、すぐに帰ってきた。すると、携帯に文字を打ちながらズンズンこちらへ歩いてきて。