チカゼは何とか葵から脱出したが、言い切るまでにヒナタを止めることができず、葵の耳にもばっちり内容が聞こえてしまった。
「……あ、ああ。キサに……もらった」
チカゼはそう言って、頭に掛かったタオルを両側から引っ張りながら俯いて顔を隠す。
「(あー。ちょっと言い過ぎたかー)」
そんなことを思っているヒナタは、「ごめんごめん。ちょっとの間違いだった」と、変なフォローを入れていた。
「……ひ、引いた?」
それから何も言わない葵を下から覗くように見上げようとしたら、バッとタオルを取られて。
「見たーいっ!」
満面の笑顔でそう言ってくるもんだから、チカゼとヒナタは固まった。
「見せて~見せて~」
チカゼの浴衣を掴んで揺する葵に二人は目を合わせてそこら中に疑問符を飛ばすが、「……ちょ、ちょっと待ってろ」と、チカゼは慌てて自分のスマホを取りに行くことに。
「……なに。そんなに自分好きだっけ?」
「ううん。……なんかさ、嬉しくって」
「どうして?」
「ん? ……いいよね。人の思い出になれることが」
ヒナタの質問に葵は小さく苦笑いで答えた後、立ち上がってチカゼの方へ歩き出す。
「……人の、思い出?」
そう言われたヒナタは、楽しそうにスマホの画面を見ている二人を、そっと見ていた。



