葵は堪らずチカゼに抱きついた。
「……何してるのあんたら」
「ヒナタくん! 今の見たー?」
「いや見てたけど、どうしたの」
こちら側まで来たヒナタはというと、葵から見えないところでチカゼの脇腹目掛けて拳を何発も入れている。下から「んー!!」と非難の声が聞こえるが、残念ながら今の葵とヒナタには届かない。
「今ね! チカくんは絶賛デレネコさんモードなの!」
「意味わかんないんだけど」
「きっと彼のことだから、足跡をしっかり残そうとしているのではないかと!」
葵がそう言うとチカゼがぴくっとなる。
「ふ~ん。確かに、チカは今回最初の茶道以来目立ってないね」
「でしょ~? それできっと、今回出番がそんなにないから、ここでアピールしておこうと思ったんじゃないかな!」
図星なのだろうか、チカゼが固まったまま動かない。
「……それで? なんであんたは抱きついてるわけ」
「だってだって、いつもツンネコさんなのに、今一瞬デレネコさんだったから! 可愛すぎて飛びついちゃった~」
「へへへ~」と嬉しそうに笑っている葵は、ヒナタの機嫌がとっても悪いことに気づいていません。
「……ふーんそうなんだ。オレもデレネコさん見たいから、ちょっとチカ貸してくれない?」
身の危険を感じたのか、チカゼは必死に葵にしがみ付く。しかしそれがヒナタの逆鱗に触れた。
「今すぐ離れないと、お前のスマホにこいつのドレス写真がいっぱいあることバラす――」
「わああああああ!」
「え。チカくん、わたしのドレスの写真持ってるの?」



