「チカくん覚悟~!」
「うっわあぁあ⁉︎」
葵はチカゼに飛びかかった。
「わしゃわしゃわしゃ~!」
「は? ……へ?」
と同時に、彼の肩のタオルを取って頭に被せ、思い切り頭を拭き始める。
「もうっ。こんなにびちょびちょで、風邪引いたらどうするんだい!」
「そっ、そんなにしたらハゲるだろうがー!」
こんなことを言っている二人は、実はめちゃくちゃ笑っていた。
「ははっ。ハゲてしまえ~。わしゃわしゃわしゃ~」
「や、やめろって!」
チカゼも、全然葵の手を止めようとする気はなく、胡座をかいている足の間に両手をずっと置いていた。
「(何してるの、あの二人……)」
そして、そんな様子をヒナタは若干引き気味で見ていた。
「もう! ほんとにダメなんだからねチカくん! ちゃんと乾かしなさーい!」
「えー。だってめんどいー」
「体は大事にしないと! お父さんとお母さんが産んでくれた体だぞ!」
「とうさんは生みませーん」
「こら! 屁理屈言うな!」
そう言ってまたわしゃわしゃする葵の手を、「もう大丈夫だってー」と言いながらやわらかく掴んだチカゼは、「じゃあお前が拭いて?」とどこか嬉しそうに、こてんと首を傾げながらおねだり。



