すべてはあの花のために③


「チカくん覚悟~!」

「うっわあぁあ⁉︎」


 葵はチカゼに飛びかかった。


「わしゃわしゃわしゃ~!」

「は? ……へ?」


 と同時に、彼の肩のタオルを取って頭に被せ、思い切り頭を拭き始める。


「もうっ。こんなにびちょびちょで、風邪引いたらどうするんだい!」

「そっ、そんなにしたらハゲるだろうがー!」


 こんなことを言っている二人は、実はめちゃくちゃ笑っていた。


「ははっ。ハゲてしまえ~。わしゃわしゃわしゃ~」

「や、やめろって!」


 チカゼも、全然葵の手を止めようとする気はなく、胡座をかいている足の間に両手をずっと置いていた。


「(何してるの、あの二人……)」


 そして、そんな様子をヒナタは若干引き気味で見ていた。


「もう! ほんとにダメなんだからねチカくん! ちゃんと乾かしなさーい!」

「えー。だってめんどいー」

「体は大事にしないと! お父さんとお母さんが産んでくれた体だぞ!」

「とうさんは生みませーん」

「こら! 屁理屈言うな!」


 そう言ってまたわしゃわしゃする葵の手を、「もう大丈夫だってー」と言いながらやわらかく掴んだチカゼは、「じゃあお前が拭いて?」とどこか嬉しそうに、こてんと首を傾げながらおねだり。