すべてはあの花のために③


「(あ。……やば)」


 彼が指差してるのは、どうやらどこかの怪盗さんにつけられてしまった赤い花。胸元につけられていたところが、シオンのせいで取れてしまったようだ。


「(さ、さ~て。逃げらんねえぞ~)」


 目の前の彼は、それはとっても怒るだろうなー。
 好きな相手にすでに、印がついてんだもんねー。


「(シオンさんが上手く話を合わせて……くれそうにない)」


 修羅場⁉︎ 修羅場なの?! って感じの目が、すっごく楽しそうだった。


「(だ、だったら、カナデくんがシオンさんにやられたと勘違い……うん。しそうだこれは。アリガトウ)」


 葵がそう思ってる間に、早速カナデは父に掴みかかっていった。
 取り敢えず葵は、その隙に手鏡で自分の首元と鎖骨具合を確認することに。


「(……よしっ。胸だけ!)」

((それどころじゃナイ。また勘違いスルゾ、この二人))

「(あー。それだけは何とか避けたいー……)」


 未だに文句を言っているカナデに、シオンはニヤニヤしているだけだった。


「か、カナデくん!」


 葵はカナデを父から引き剥がした。
 すると……まあ当然だろう。矛先はこちらへ。


「誰⁉︎ 誰につけられたの⁉︎」


 カナデが肩を掴んで大きく揺らす。
 お腹が空きすぎて胃液が出そうだった。


「え、えーっと……」


 もじもじしていた葵に痺れを切らしたカナデが、バッと浴衣を開いて他の箇所を調べてきそうになったところで。