「(あ。……やば)」
彼が指差してるのは、どうやらどこかの怪盗さんにつけられてしまった赤い花。胸元につけられていたところが、シオンのせいで取れてしまったようだ。
「(さ、さ~て。逃げらんねえぞ~)」
目の前の彼は、それはとっても怒るだろうなー。
好きな相手にすでに、印がついてんだもんねー。
「(シオンさんが上手く話を合わせて……くれそうにない)」
修羅場⁉︎ 修羅場なの?! って感じの目が、すっごく楽しそうだった。
「(だ、だったら、カナデくんがシオンさんにやられたと勘違い……うん。しそうだこれは。アリガトウ)」
葵がそう思ってる間に、早速カナデは父に掴みかかっていった。
取り敢えず葵は、その隙に手鏡で自分の首元と鎖骨具合を確認することに。
「(……よしっ。胸だけ!)」
((それどころじゃナイ。また勘違いスルゾ、この二人))
「(あー。それだけは何とか避けたいー……)」
未だに文句を言っているカナデに、シオンはニヤニヤしているだけだった。
「か、カナデくん!」
葵はカナデを父から引き剥がした。
すると……まあ当然だろう。矛先はこちらへ。
「誰⁉︎ 誰につけられたの⁉︎」
カナデが肩を掴んで大きく揺らす。
お腹が空きすぎて胃液が出そうだった。
「え、えーっと……」
もじもじしていた葵に痺れを切らしたカナデが、バッと浴衣を開いて他の箇所を調べてきそうになったところで。



