どうしてこうも、彼の声を聞くだけで、顔が火照ってしまうのだろう。
『私はあなたの気持ちを奪いに行きます。それまでは決して、誰にも奪われないでくださいね』
「そ。それはわかりませんけどね?」
もう恥ずかしくって、口を押さえながら盾突くので精一杯。
『…………』
「あ、あれ? どうされ……」
『そうですよね。誰を好きになるかは、あなたもわかりませんから』
「え? え??」
『本当は私が幸せにして差し上げたいけれど。……あなたが幸せなら、私も幸せだ』
いきなりどうしたんだろう。
さっきの自信はどこへ行ったのか。
『ただ、約束してください。あなたの道が変わった時は、自分の気持ちを正直に。いいですか?』
「……わかりました。その時は必ず。わたしも変わります」
葵がそう言うと、彼は安心したかのような吐息を漏らした。
『その相手が私であるのが一番嬉しいことですが、それはあなた次第だ』
「(どうしてそんなに苦しそうなのだろう)」
『もし、急にどうしても私の声が聞きたくなったのなら、時間は気にしなくていいですよ』
彼は雰囲気を明るくしようと思ったのか、軽口を叩くようにそう言ってくれるが。
「……それは、ダメですね」
『どうしてですか?』
葵は自分の手で火照った顔を押さえながら必死に言葉を紡ぐ。
「……それだと。いつでも、掛けちゃいます」
『え』
「時間も無視しちゃいます。毎日でもっ。掛けちゃいますよ。あなたの声を聞くだけで、安心する。今も……きりたく、ないんですっ」
『…………』
何とか言い切って、また膝の間に顔を埋める。
『そう言っていただけて、嬉しい』
「……っ」



