『ちょーっと葵! 聞いてくれる!? 三人にめっちゃ腹立っちゃったから俺キレちゃってさー! でもでも! 俺の弟マジ可愛いんだけど! あんなに負けず嫌いでさ! お前のことどんだけ好きなんだって思ったね! 俺には負けるけど~』
「みたいなことを怒濤のように言ってたよ?」
「シン兄……」
「わたしが知ってるのは、シントがキレたって言ったから。あとは、アキラくんがわたしのことが大好きでしょうがないってことぐらいかな? それぐらいしか話聞いてないけど……何をそんなに慌ててるのかな?」
「え。……葵。ちょっと聞いてもいいか」
素直に話した。だから聞かれたところでこれ以上のことは知らないけれど……と、首を傾げる。
「はい。どうぞ?」
「あ、葵は、俺がお前を好きだって、知ってるのか?」
「え? うん。知ってるよー。わたしがアキラくんのお母様に似てるんだよね? あ! あと、友達だし仲間だもん! わたしもアキラくんのこと大好うぅっ……?!」
葵は言い切る前に、目の前の彼に強く抱き締められてしまった。
「……っ、違う!」
「あ。アキラ、くん……?」
珍しいこともあるもんだ。彼がこんなに大きな声を出すなんて。
「俺は葵を母さんと重ねてなんてない。俺は……葵とは、友達以上の関係でいたいと思ってる」
「え? じゃあ親友?」
「ちがう!」
否定する度にきつく抱き締めてくるので、葵は骨が折れるかと思った。
「あ、あきらくんごめん……。骨が折れそう……」
「あ。ご、ごめん」
けれど力を緩めただけで、アキラは葵のことを離そうとしなかった。
「……どうしたの? アキラくんしんどい?」
目の前のアキラは、明らかに眉間に皺を寄せて苦しんでいた。
「……俺は、葵が好きだ」
「ん? うんっ。ありがとう! わたしもすきー!」
葵がにっこりそう言うと、アキラはまた「違う」と言う。
「俺は、葵の前じゃないと笑えない。笑いたくもない」
「ええ?! それは駄目だよ! アキラくんはもっと笑っ、……?」
人差し指が唇に付けられて、話せなくなってしまう。



