「あ。……朝日だ」
アカネとオウリと話している間に、辺りはすっかり明るくなっていた。
どこにいるだろうかと思って廊下を歩き続けていると、今度はぶんッぶんッと何かを振っているような音がした。自然とそちらへ足が進む――――。
そこには、昨日使っていた木刀で素振りをするツバサの姿があった。
「……ツバサくん、おは……」
葵は声を掛けようとしたけど、声が全然出なかった。
素振りをしているツバサが、いつもとあまりにも雰囲気が違いすぎて、怖かったからだ。
「(……君も苦しそうだ)」
苦しみ。悲しみ。…………。
そんな感情を払拭するかのように、ただ只管振り続ける彼に、葵は見ていることもつらくて早々にその場を立ち去った。



