すべてはあの花のために③


「あ。……朝日だ」


 アカネとオウリと話している間に、辺りはすっかり明るくなっていた。
 どこにいるだろうかと思って廊下を歩き続けていると、今度はぶんッぶんッと何かを振っているような音がした。自然とそちらへ足が進む――――。

 そこには、昨日使っていた木刀で素振りをするツバサの姿があった。


「……ツバサくん、おは……」


 葵は声を掛けようとしたけど、声が全然出なかった。
 素振りをしているツバサが、いつもとあまりにも雰囲気が違いすぎて、怖かったからだ。


「(……君も苦しそうだ)」


 苦しみ。悲しみ。…………。
 そんな感情を払拭するかのように、ただ只管振り続ける彼に、葵は見ていることもつらくて早々にその場を立ち去った。