すべてはあの花のために③


 にっこり笑ってくれる二人に癒やされながらも葵は二人に、主にアカネに伝えなければならないことがある。


「稽古中なのに邪魔してごめんね? 少しだけ、わたしに時間もらえるかな?」


 今の今まで話していたのに、どうしたのだろうかと二人は首を傾げる。


「アカネくん。それから、多分オウリくんも気づいてると思う。昨日戦った二宮道場出身の人たちは、事は犯してないこと、わかったでしょう?」


 葵がそう言うと、二人は一瞬見開いた後、こくりと頷く。


「昨日シオンさんたちに聞いたんだ。……チガヤさんとアサジさんを襲った人たちは、もう捕まってるって」


 葵がそう言うと、二人は驚いたまま、固まってしまった。


「はっきりとは聞いていないよ? わたしも、ただ二宮道場の出で、恩を仇で返すようなことをした人がいるかと、今どこにいるか聞いただけだから」

「あおいチャンは、どうしてここの関係者だと思ったの……?」

「昨日戦った人たち以外にもいるのかと思ったの。それにチガヤさんの話では、五人の元生徒さんに襲われたって。シオンさんも、『五人は檻の中』って言ってた。わたしの予想が当たってたらいいなと思って二人に確認したら、そう教えてくれたんだ」

「だったら、もう。父さんとおじいちゃんをまた襲いに来ることは、ないんだね……」


 本当は、自分が直接相手をしたかったのかもしれない。
 でも、そうしたら君たちも同じようになりかねない。


「だから、仇討ちをしようとか、そんなことはもう考えたら駄目だぞ? これからは道場のために、自分の夢のために。将来のことを家族としっかり話していくんだ。わかった? アカネくん。それから、恐らく聞いていたんだろうオウリくんも!」


 葵がそう言うと、二人はしゅんと小さくなってしまった。


「こら。なんで悔しそうなの。喜ぶところでしょう? このこと、早く教えてあげなよ。きっとみなさんも安心できると思うからさ?」


 葵がそう言うと、二人はやっと納得してくれたようで、ふわりと微笑んでくれた。


「(よかった。これで大丈夫だ)」


 二人は稽古の続きをするらしかったので、先にお礼を言いに行くと言って、その部屋から出て行った。