「……何話すの?」
「オウリになんて言われたの」
なんだ。そんなことか。身構えて損した。
「今回はそんなに時間がないからね。手短に」
「え。聞いておきながら注文多いな」
葵はツバサに話したのと同じように、『おれも引き立て役だから』と言われたのだと伝える。ヒナタは少し考えたがイマイチよくわからなかったらしく「説明を求めます」と言われた。
なのでこの仮装が何の童話なのか、ゆっくり時間をかけて説明してあげることに。
「それで、あんたの仮装を見て何の童話か気づいたオウリは、そんなこと言ったってこと」
「そういうこと。やっぱり兄弟なんだね。同じこと気にするなんて」
葵がそう言うと、「それ心底嫌なんだけど」ってマジ顔で返されたので、心の中でどんまいと、お兄ちゃんには言っておいた。
そうしていると葵の携帯が鳴った。一体誰だろうと思っていると、「誰」って、ヒナタも首を傾げながら機嫌悪く聞いてきたので見てみたら。
「……トーマさん」
「トーマ?」
「しかも電話」
「ちょっと出てくるね」と言って席を外そうとすると、少し強めに腕を掴まれる。
「え?」
「今、オレと話してるんだけど」
上目遣いでそう言われても。……ちょっと、破壊力強すぎませんか。
「うーんと、ヒナタくんとは学校も一緒で生徒会でも一緒だからいつでも話せるでしょう?」
「でも二人っきりになれることない」
「は、話ならするよ? だから、トーマさん待たせちゃってるから出るね」
そう言って立とうとするが、やっぱり手は掴まれたまま。
「じゃあ話していいから、ここにいて」
と言われたので、仕方なく席を外さず電話に出ることに。ヒナタがいる方の左手でスマホを耳につけると、何故か彼は体をこちらに近づけてくる。そして、葵の左手の甲に耳をぴたりとくっつけた。
「(聞きたいならスピーカーにしたのに)」
急に近くなった距離に驚いたけど、なんだか可愛いなと思い、折角なのでそのままにしておいた。



