「まあ頭が切れる葵ちゃんなら、このことは予想ついとるかもしれんけどな」
「でも、今まで何も知らなかった俺らがこんなことを急に知ったなんてことがバレたら、『あいつ』の存在がバレる」
「せやな。だから言えんかった。心苦しいわ」
「しょうがない。俺らは『あいつ』の駒だ。……その情報と引き替えに、彼女と話をしたんだから」
「せやけど、なんで『あいつ』は葵ちゃんが俺らんとこ来るって知っとるんや」
「さあ? でも座布団三枚は準備しておいてよかったよ」
「……あとは報告か」
「そうだね。ちゃんと録れてるだろう?」
「危うく湯に浸けるとこやったけどな。ギリギリセーフやったわ」
そう言ってマサキが取り出すのは小型の機械。ボイスレコーダーだ。
「お前、故障したらマジでクビだったから」
「マジで!? 危なかったわ~……」
なんだか嬉しそうにそう返すマサキ。
「報告は、また落ち着いてからでもいいだろう」
「せやな。また、葵ちゃんが元気になってからでも渡そかー」
彼らはそう言って、やっと更衣室に向かったのだった。



