すべてはあの花のために③


「……うっわ。美人だと思ったらオカマとかショックー……ガクッ」

「ああん?」


 ツバサはぺしんッと葵の頭を叩く。


「起きたんならさっさと起きろやコラ」


 一度がくっと意識を失ったが、葵はもう一度目を開けた。


「……あ、れ。ここ、は……」

「アオイちゃん!」
「気づいたか!」


 葵はさっきまで一緒にいた二人に焦点を合わせる。


「……し、おん。さん……」

「うん。なに?」

「まさきっ、さんっ!」

「うおっ!」


 葵は二人を、今出せる精一杯の力で引き寄せる。
 そして、彼らの耳元で囁いた。


「……さっきのことっ。みんなにはっ、言わないで……」


 本当に小さくて。消え入りそうな声で。彼らだけにしか聞こえないように、葵はそう言った。
 葵は、そのままシオンの肩口に頭を乗せたまま気を失ってしまったが、もう浅い息でもなく冷たくもなかった。


「アオイちゃん……」
「……すまんなあ」


 葵のその声に、彼らは答えることはなかった。