不安に揺れる葵の手を掴み、キサは葵に目を合わせる。
「あっちゃん、それは違うんだ。恋愛ってね、嬉しくもあり苦しくもあるんだよ。だから、あっちゃんは正しいの。その感情を持っていることは、悪いことじゃないんだよ」
葵の頬を、今度は両手で包み込んであげる。
「みんながみんな、好きな人と一緒になれるわけじゃない。あっちゃんが苦しかったのは、カナデのことをちゃんと考えてあげたからだ」
葵は涙を流しながら頷く。
「あっちゃん。それがね、恋愛なんだ。しんどいよね。つらいよね。苦しいよね。でもね、その分自分が好きな人と結ばれた時、本当に幸せな気持ちになるんだよ。その気持ちを、あたしはあっちゃんにも知って欲しい。だって今、あたしがこんなに幸せなのは、あっちゃんのおかげだから」
キサはふわりと笑う。でも葵の涙は止まらない。
「もしあっちゃんに好きな人ができたら、そのことから絶対に目は逸らさないで。その相手のこと、ちゃんと見てあげて? あっちゃんは十分幸せになれる。あたしが保証してあげる!」
そう言ってキサは、泣き続ける葵の頭を抱き締めてあげた。葵は、最初は驚いたけど、何も話さずにただ涙を流し続けていた。
「……きさ。ちゃん……」
「ん? なーに?」
落ち着いたのか、葵はキサの名前を呼ぶ。
「……一個さ。聞きたいこと。あるんだけど……」
「おう! このキサ先生に何でも聞きなさい!」
「それじゃあ……」そう言って葵はキサに問いかける。



