すべてはあの花のために③


 カナデがそう言うと組の、親父とマサキ以外が飛びついてくるが、カナデはそれを華麗に避け今度はみんなの方を向く。


「みんなもありがとう。みんながいたから俺は成長できたよ。……どうせ、アフターフォローもバッチリなんでしょ?」


 カナデがそう言うと、キサとヒナタがにやりと意地悪く、アカネとオウリがにっこりと笑う。


「はあ。……文化祭の振り替えだし、明日会いに行きますよ、彼女たちに。アキ、チカくん。俺の代わりにやっつけてくれて、ありがとう」

「……オレ、はっ……」

「よかったら一緒に先生のお見舞い行ってもらえない? 俺、一人じゃ心細くって」


 カナデがウインクをつけてそう言うと、チカゼは苦笑いしながら、「……ははっ。りょーかい」と涙声で返していた。


「ツバサ。アオイちゃんにも声掛けてくれてありがとう。お前のおかげで俺は今、こうしていられるよ」


 カナデが真面目な顔でそう言うと、ツバサは「気持ち悪っ!」と言っていたけれど、その顔はずっと笑顔だった。


「最後に、……アオイちゃん」

「ん? なあにカナデくん」


 カナデは葵の前に立ち、手を取って、ゆっくり話し出す。


「キツいこと、言ってくれてありがとう」

「ドMだねえカナデくん」

「ははっ。そうかも。……ちゃんと知ってたら、アオイちゃんのこと、傷つけずに守れたのに」


 カナデは、葵の頬の傷と肩口に触る。
 その触り方が遠慮がちで、ちょっとくすぐったかったみたいで、葵は少し身を捩らせる。


「アオイちゃんが狙われることも、襲われることもなかったのに」

「でも、そうじゃないと君は多分わたしに話さなかったんじゃない?」

「そんなことは……」

「ないとは言い切れない。組のことも、東條のことも、それから過去のことも」

「……うん。そうかもしれない」

「うん。だから、わたしは君のことが知れて嬉しいよ?」


 葵がにっこり笑ってそう言うと、カナデも嬉しそうに笑ってくれた。