葵はカナデの背に腕を回して、優しく抱き締めてあげる。
「それから君はまた塞ぎ込んで、部屋から出てこられなくなったんでしょう?」
彼は頷いて応えた。
「……君は知っているのかな。先生が毎日のように組まで来ていたこと」
「え……?」
カナデは顔は上げなかったものの、どうやら知らないようだった。
「先生はあんなことをされてても、大事な生徒を手放したくなかった。また前のようなことになって欲しくなかったから、君に声を掛けたくって来てたんだけど、門前払いだった。……それはもう、何でかわかるね」
「……うんっ。こいつらが勝手に、やったことっ」
「そう。でもね? 彼らがやったのは、君が大好きで、君を守るため異常に過保護になってしまった結果だったんだ。……どうかな。こんなお馬鹿な奴らの代わりに、君が先生のところへ行ってお見舞い、できるかな?」
彼は頭を上げて、首を緩く振るだけだった。
「……ごめんね。会いたい。会って、こいつらがしてしまったこと、謝りたいんだけど。俺に情報が足りなさすぎる。……ちゃんと襲った奴らのこととか、はっきりさせてからじゃないと、俺は会いに行けないんだっ」
カナデは目に涙を溜めながらそう言う。
「……そっか。じゃあ、それがあったら君は、明日にでも彼女たちに会いに行きたいかな?」
「え? うん。それは、そうだけど……?」
カナデの返しに、葵はにっこり笑ってみんなを見渡した。
「だ、そうなんだけどー。カナデくんにその情報、教えてあげてもらってもいいですかー?」
葵がそう言った先には――――。



