「しかも彼らは、彼女から伝言を預かっていたようなんですが、君はそれを聞いていますか?」
「はあ!? そんなの聞いてない! 何?! 何て言ってたの!?」
「最初は『会わせて』ってお願いしたんだって。でも嘘を丸呑みしてた奴らには、彼女は君の敵にしか見えなかった。だから彼らは『そんなことはさせない』と言ったんだ。そうしたら彼女は、『ごめんなさいと伝えてくれ』って言ってたそうだよ? 今わたしが伝えてあげたよ? 君は、会いに行けるかな。彼女に」
「俺が悪かったのに。謝るのは彼女じゃないのに。……ごめん、アオイちゃん。まだそいつらを見つけない限り、俺は行けそうにないや」
彼は悔しそうにそんなことを言う。
そうだね。もっと早く知っていたら、何か違ったのかも知れないね。
「……わかった。それから、彼らは君が先生のことを好いていたと、そう思ってたらしいんですが?」
「ええ!? いやいや! 確かに綺麗な人だったけど! 俺が惹かれてたのは彼女が書く文字だから! 何勝手に勘違いしてんの。俺そんなこと言ってないじゃんマサキ」
カナデが拗ねながらそんなことを言っている。
マサキはというと、「俺のセンサーの調子がな~」って頬をポリポリしながら視線は絶対こっちに向けなかった。
「それでなんだけど、どうやらこいつらは先生のことも、男を取っ替え引っ替えする最低女だって知ったらしいですよ? しかもこれは自分たちの目で見て確認してたそうですが」
「……あーごめん。マジでキレそうになってきた俺」
カナデは葵に、なんとかしがみついて抑えているが、その目は確実にめちゃくちゃ怒っている。
「なんでそこで俺に言わないかな?! 言ってたら先生のこと助けてやれたじゃん!!」
本当に悔しそうに、カナデがお馬鹿な奴らに叫ぶ。
叫び終わったカナデは、「ううぅ~……」って唸りながら、葵の肩に顔を埋める。
カナデの涙で、葵の肩が濡れていった。



