すべてはあの花のために③


 先生はね、すごく俺の気持ちを軽くしてくれたんだ。
 そうそうアオイちゃんみたいにね?
 しつこいぐらい、毎日のようにウチまで来てたから、しょうがないから部屋に入れてあげたんだけど……いきなりね? 書道の準備し出すんだよ。ビックリしちゃうよね!

 でも、先生は俺のいろんな話を聞きながら、俺の気持ちを文字にしていった。
 それが本当に綺麗な字でね?
 文字だけでこの人は、なんて繊細で細やかでそれでいて力強くて。引き付けられるような文字を書くんだろうって思って、俺は驚いた。


 アオイちゃんは覚えてるかな?
 アオイちゃんね、文化祭の開祭式の時、俺の字を見て似たようなことを俺に言ってくれたんだ。
 昔の、俺が先生の文字を見て思ったことと同じこと。すっごい嬉しかった。先生に少しでも追いつけたかなって。

 それからは家でちょくちょく書いてたけど、書道に興味を持った俺は先生にいろいろ教えてもらってた。
 次第に俺は先生にも惹かれたけど、それは愛情とかよりも尊敬の方が大きかったかな?

 また学校に通えるようになった俺は、先生に本気で書道がしたいって言ったら、先生も必死になって教えてくれた。休日とかも教えてくれたりしたんだ。あの頃も毎日が楽しかった!

 ……でも、それもあっという間だった。


 前の彼女を襲った奴らが、今度は先生に手を出すようになったらしいんだ。
 でも、俺は最初そのことは知らなかった。先生に、上手く隠されてたんだよ。

 先生は、自分の体を売ってまで、俺のことを守ってた。また俺は、守られてたんだ。

 それを知った俺は、また自分を責めた。
 俺と関わる人は、どんどん酷い目に遭ってしまうって。

 そして終いには、五十嵐組の奴が先生に手を出して殺しかけたって聞いたんだ。俺はまた、助けられなかったと思った。
 しかも、身内にそんなことをさせてしまったこと、されてしまったことで、そもそも人を信用できなくなった。

 だから俺は、自分から人と距離をとるようになった。