「……さてと。カナデ、マサキから聞いたか?」
「え? それは、聞いたけど……」
カナデは、どうして未だにその話をしないといけないのかがわからないので、首を傾げていた。
「お前もそう思うよな? 俺もそう。でも、この女の用件がそれだからさ」
「? ああ、思い出すのがつらいかもって言うんでしょ? まあしんどくないわけじゃないけど、アオイちゃんがそれを求めてるなら俺は話すよ」
カナデは、葵に視線を向けながらそう言う。
「カナデくんごめんなさい。興味本位でとかじゃないんだ。でも、聞いておくべきだと思って君からではなく先にマサキさんから聞いたんだ。だから、そんな無責任なことしてごめん」
葵は申し訳なさそうに、そう謝った。
「え? 全然。アオイちゃんになら話すよー。だって俺のこと、知ってもらいたいしね?」
「いえ。別にそこまで知ろうとは思わないので」
「ええ!? なんでー!」
「組の子って知らなかったし」
「うっ!」
「東條は母方の名字って知らなかったし」
「ぐさっ!」
「……それもマサキさんから聞いたの。だから、ごめんなさい」
そう言って謝る葵に、カナデは一瞬目を剥いたあと、愛おしげに見つめる。
「……うん。全然いいのに。アオイちゃんは律儀だね。それじゃあ、許してあげましょう」
あまりにも優しいカナデに、シオンは嫌そうに少し顔を歪めていたが、葵はカナデに微笑み返すだけにしておいた。
「それじゃあカナデくん。昔の話してもらってもいい? カナデくんの話には誰一人として口を挟ませないから……【本当の話】、してもらっていいかな?」
その場の全員が目を見開く。
「……うん。わかったよ」
そうしてカナデが話し出すのは、本当の、彼が囚われる原因となった過去の真実――――。



