「文句を言わず! ただ静かに! カナデくんの昔話を聞きなさいッ‼︎」
……ハ?
もっと、自分を殺すなとか、今までしてきたことを謝れとか、自分に関してのことだと、その場の全員が思っていて拍子抜け。
何ともまあ、口をあんぐりと開けて。だらしないったらありゃしない。
「へ? あ、あの。お嬢ちゃん?」
そんなことを言うマサキも、自分が思ってた用件では全然なかったので、驚きを隠せない。
「ん? なんですかマサキさん」
「いやいや、俺、お嬢ちゃんには違うことを頼んだつもりなんやけど……」
マサキは若干ビビりながら、そんなことを言う。
だって、あまりにも葵が放つ怒りが、目の前の男共よりも凄まじいからだ。
「……マサキさん。わたしが言う用件にはもちろん、あなた側の人たちのことも入ってますからね? あなたも黙って、カナデくんの話を聞けっつっとんじゃゴラ」
「(え? 俺さっきお嬢ちゃん側って、言われとらんかったっけ?)」
そんなことを思いつつも、マサキは葵に依頼した身だ。
そして、このどうしようもないほど目の前の少女が怖いと感じてしまい、彼は何も言えなかった。
「(ヤクザの男たちをここまでビビらせるとか。やっぱりお嬢ちゃんは、只者やないんやな)」
マサキは、親父以外の男たちが震え上がっているのを見ながらそんなことを思っているのと同時に。
「(そんなお嬢ちゃんを目の前に、ビクともせん紫苑さんはやっぱり強い。何がって、それは腕っ節もそうやけど何よりも『気持ち』が強いんや)」
親父は目を瞑って考え込んでいる。
そんな様子を、葵は何故かワクワクしているように見つめていた。



