すべてはあの花のために③


「じゃ、じゃあ最初の質問から。さっきね、校舎を歩いていたら嫌な視線を感じたの」


 葵がそう言うと、ツバサも先程のみんなと同様窓に視線を向け、入場してくる一般客を睨むように見た。


「そう。……でも、どうしてあの子たちといたのかしら」

「その視線があまりにもしつこく纏わり付いてくる感覚がして、逃げ込んだ先が茶室だった。そこでみんなに会ったんだ」

「そういえば1-Sがあの建物を貸し切ってたわね」

「それで、生徒会室まで二人がここまで送ってくれたんだ」


「なるほどね……」とツバサは考え込むような姿勢で頷いた。


「(なんだろう。この敗北感)」

((しょうがない出来が違ウ))

「(ひっ、ひどい……っ)」


「そう。わかったわ。それで? もしよければ他のことに関しても教えてくれる?」

「え? うん。それは全然大丈夫だよ?」


 そう言うと、何故かツバサは呆気にとられたような顔になる。


「……教えてくれるの?」

「え? 逆に何で教えないと思ったの?」


 葵がそう言うと、ツバサは一気に体の力が抜けたようにぐでーんっとなった。今まで何をそんなに緊張していたのか。


「(これは、普通に聞いても大丈夫だったのね)」

「ツバサくん大丈夫? 取り敢えずソファー座ろう?」


 確かに立ち話もなんだしさ。二人はさっさと座った。