そう思っていたら、彼がすっと立ち上がる。
「マサキ、俺は『殺してこい』って言ったんだけど。誰が連れてこいって言った」
威圧感たっぷりで、彼にそう問いかけた。
「あ~それなー? ちょっと俺の独断でここへ連れて来たんやー。だって紫苑さん、最初は自分の手で殺る言うとったやろ?」
彼はケラケラと、楽しそうにカナデの父に答えた。
「俺はそれは、もういいから殺せって伝えたはずだけど。こんな女の顔なんか一生見たくなかったんだけど?」
彼は茶化すようにそんなことを言ってはいるが、目は鋭く葵を見つめたまま。その瞳には“殺したくてしょうがない”という意思が込められている。
「まあまあ。そんな怒んなや紫苑さん。それでもやっぱり直々にやりたいんやろうと思って、わざわざ連れてきたんやからー」
マサキはそう言って、先程入ってきた戸をスパンと閉め切り、誰も入ってこられないようにその戸の前に立つ。
「それは余計な気遣いだったね。俺が手を下すまでもない。ここにいる奴らが、やってくれるさ」
彼は嘲笑うように、葵のことを見下す。
ま、どうでもいいんですけどね。
「へえ。やっぱお前らも、このお嬢ちゃんを心底殺したいほどあいつが好きなんやな」
そう言うマサキは、さっきの葵と一緒でとても楽しそうだった。



