すべてはあの花のために③


 それから……どれくらいたったやろうか。あいつの担任が、学校に来んあいつを心配して、家までよう来よった。

 学校関係者はあいつが、暴力団の子っていうんは知っとる。それでも、最初家来た時は相当驚いとったけどなー。
 こんなにイケメンなのに、「怖い顔がいっぱい!」なんて言うたんやで!ほんま失礼なやっちゃって最初は思ったなー。

 それでもあいつはやっぱり部屋から出てけえへんかった。
 それでも毎日のように屋敷に来る担任に痺れ切らしたんか、部屋にはよう入れよった。

 まあそれのおかげか、あいつは学校に行けるようになった。その担任に教えてもろうたんか知らんけど、いきなり書道をし始めた。

 家が家やから、元からある程度は上手かったはずや。俺らが教えよったからな。でも、あの頃は嬉しそうによう書きよった。

 上手く書けたら、先生に見せるんやって言っとったなー。
 俺は一回聞いてみたんや。先生が好きなんかって。

 あいつは答えんかったけど、あれは多分好いとる目えやった。今度は先生かいなって思った。
 生徒と先生なんて。しかもまだ中学生や。相手にもしてくれんやろうにとも思ったけど。

 あいつが学校に行くようになったんは俺も親父も嬉しかったからな。しばらくは見守ることにした。

 それからしばらくして、あいつらが内緒で会ってるのを知った。
 俺らは、上手くいったんやって。立場上大変やけど、それでもあいつが幸せならええかなって、そう思っとった。

 ……でもな。その女も裏切ってん。
 俺らは、女が別の男とホテルに行ったんを見てしもうた。最初はなんかの間違いやって、そう思うとった。

 でもな、一回二回の話しちゃうねん。その頃しょっちゅう行きよったんを見かけた。

 ああ、こいつもあいつを遊びで振り回しとったんかって思うた。でも、あいつは知らんみたいやった。

 俺らは取り敢えず黙っておくことにしたんや。
 でもな、ホテルに入っていってるんはいっつも違う奴。
 流石にこいつの根性叩き直したろうかって思うた。

 それから、少し経ってからか。やっぱりあいつが部屋から出てこんくなった。気づいたんやろうって、そう思った。

 学校に行けんくなったあいつに会いに、性懲りもなくまた担任の女が来た。でも、俺らは絶対に家には上げんかった。
 こいつのせいで塞ぎ込んどるのに、なんでそんなことする必要がある?ないやろ?

 それでもな、その女はしつこかったんや。
 毎日来た。毎日追い返した。その繰り返し。

 相手をコロコロ変えるような最低女に、親父はキレた。その女を、怖い目に遭わせてやれって指示があった。
 俺側の奴らはそこまですることはない思うて、他の奴らが手出さんように見張っとった。

 でもな、ちょっと目え離した隙に、あいつのことをすごい慕っとった奴が手を出してもうたんや。
 女は重傷。今も何とか生きとるけどな。暴力沙汰でそいつは警察に連行された。
 ま、頭冷やすんにちょうどいいやろってまだ入っとるけどな。