生徒会室から出て行った二人は……。
「ねえオウリ。あいつに何て言ったの?」
ヒナタがオウリにそう聞くが、彼は口の前に人差し指を立ててにっこり笑うだけだった。
「(何それ。すごい気になるんだけど)」
こうなったら、この苛々した気持ちをチカゼにぶつけるしかないと思ったヒナタであった。
生徒会室に残った二人はというと……。
「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ツバサが背を向けている葵に、そう話しかける。
「んー? なーにツバサくん」
葵は背中を向けたままそう答えた。
「アンタ、本当は驚いてないでしょう。アタシがここにいること」
ツバサがそう言って初めて、葵はツバサの方へ振り向いた。
「すごいね! どうしてわかったの?」
「異常に驚きすぎだったから、そうなのかと思っただけよ」
なんせ開祭式が終わってから、みんなで衣装合わせをしている。一度見てるのにそこまで驚いたのは、わざとしか考えられなかったのだろう。
「そっか。ちょっとやりすぎたかな?」
「……まあ、それはどうでもいいわ。それとは別に聞きたいことがあるのよ」
「聞きたいこと?」
「白々しいわね。わかってるんでしょ。アタシがどうしてここにいるのか」
「……わかってはいないよ。クラスのみんなが逃がしたのにどうしてここに逃げ込んだのかとか、今からわたしがここに待機するから用事があるのかなとか、そんな感じにしか思ってなかったよ?」
「じゃあ、そういうことにしといてあげるわ」
「……それで? 何が聞きたいのかな?」
纏う空気を変えた葵に、ツバサは顔を顰めた。
「今は……そうね。じゃあ三つだけ」
一つは何があったのか。だから日向たちと一緒にいたんだと思うし。
もう一つは、その仮装。どうしてそれにしたのか。
最後はさっき桜李に何を言われたのか。
「よければ教えてくれるかしら?」
さっきの愁いた顔はどこへ行ったのやら。



