「だから、その子は友達やからって。ずっと言うとった」
「え?」
「それ以上でもそれ以下でもないからってな。あんたが狙われんように、ずっと俺にそう話しとった」
「それ以上でも、それ以下でも……」
「でもな、それも限界やった。子どもの浅知恵も虚しく明々白々。あんたに執着しとるんを親父は知った。明らかにあれは、好いた女を見る目えや」
「――!」
「体育祭の前日やった。『俺側じゃない奴』がお嬢ちゃんとカナが抱きおうとるんを見たらしいねんな」
「(いやいや、あれは慰めてもらってただけなので)」
そう思いつつも、もう遅いと思って何も言わないけど。
「それを聞いた親父はプッツン。ほんま、短気で困るわ~」
「殺すとか言ってる時点で短気じゃ済まないですって」
「まあ、それは置いといて」って彼はまた話す。
「なんでお嬢ちゃんに助けを求めたか。俺は、お嬢ちゃんのことをあいつからしか聞いとらんかったけど、悪い奴とは思わんかった。それに、強い強い聞いとったけど、どんだけかわからんかったし」
実際、俺が表に出て動くことはそうないんや。
『前回』もそう。せやから、止められんかった。
「それでまあ、あの時襲ったんは腕試しっちゅう感じやな。その時から、俺はもうお嬢ちゃんに助けてもらおう思うとった」
「はあ。あなたも、言葉が足りなさすぎて困ります」
「すまんすまん。せやかて、初めましてで一回襲うとんやで? ロケ〇ト団がやけど。それやったら、連れて行くしかないやん? なのにほんまに強すぎやし。……でも怪我させるつもりはなかったんや。ごめんな」
彼は、葵の左肩と左頬と、切り落とした髪に触れてくる。
その少し震える指先に、心配そうな表情に、何故か涙が出そうになった。
「でもな、お嬢ちゃんに頼むことに不安もあんねん」
カナから聞いたことや。
やさしい子やって、ええ子なんやって、おもろい子なんやって、めちゃくちゃ強い子なんやって。せやから、ほんまにどんな子か知ろう思うて俺が直接相手した。
友達のために、あそこまでできる子は早々おらん。
友達のために、あそこまでできる子は、心からほんまにやさしい子だけや。
「せやけど、それ以外はほんまにわからん。いっくら調べてもダメやった。それを親父も知っとるから怒っとる。ほんまのところは、悪い奴なんやないかってな」
「なるほど。親父さんは、自分はいいことをしてると思ってるんですね。彼にとって、悪い奴を叩き潰していると」
「間違うちゃおらん。それはまたちょっとだけ俺から話すけどな。でも俺は、連れて行く前に確証が欲しい。お嬢ちゃん、あんたは……悪い奴か」
葵はそう言われて目をつむる。
それからゆっくり開いて。
「あなたの言う【悪い】の基準がわかりませんが。……友達から警戒心が強いって言葉とともに信用という言葉が出てきました。もしかして、彼は昔、女性に裏切られたことがあるのでは?」
「…………」
「だから、あなたが悪い奴というのは【彼を裏切るかどうか】ということで合ってますか?」



