返ってきた真っ当な返事に「正気になったんならいい」と、キサは睨み付けるように目を細めた。
「それで? さっきは『俺が助けてくる』って意気込んで出て行ったくせに、どうしてあんたはこんなところで突っ立ってんの」
「うん。何、してるんだろうね。俺」
カナデは頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
彼から聞こえる嘆きに、みんなが駆け寄る。もちろんキサ以外。
「圭撫。今どうしてここにあっちゃんはいないんだ。それをちゃんと知っているのはあんたしかいない。だから、あたしたちにわかるようにきちんと話しなさい」
「……アオイちゃんは。自分からあいつに。連れてってくれって。言ったんだ」
みんなは驚きを隠せないでいた。
「……そう。それで? 他には」
「俺が助けようとしたら。アオイちゃんは、あいつを庇ってた。『これはわたしが好きでやってることだ』……って。それからアオイちゃんを連れて行った奴は。こう言ってた。……アオイちゃんの命は、今日まで。あと2時間弱だって」
その言葉に、チカゼがカナデに掴みかかる。
「おい。それで何も言わなかったのか。動かなかったのかよ」
体の奥で、低く唸るような声を出すチカゼ。彼は今、相当怒っていた。
「俺は、止めた。ちゃんと。アオイちゃんを引き止めた。でもダメだった。俺の傍になんかいるつもりはないんだって。言って、たんだ」
自分ができることはやったと、カナデも悔しそうに言い返す。
「圭撫。本当にあっちゃんがそんなことを思ってると、そう思ってるの?」
さっきの雰囲気を変えて、少しやわらかい口調になったキサがカナデに問いかける。
「……おもわない」
「それがわかってるんなら、圭撫は『昔』より十分成長したよ」



