「それはそうと、ツバサくんはどうしたの? まだツバサくんは時間じゃないよね? うちのクラスの出し物大丈夫?」
葵がそう言うと、ツバサはゲッソリなる。
「手伝おうと思ったわよ。でも一般客の男たちに、これでもかと言うほど言い寄られて気待ち悪い……ってなってたところを見かねたみんなが逃がしてくれた」
「おう。それはそれは」
さぞ、大変だったことだろう。
三人で両手を合わせておいた。
「それじゃあ二人とも、ここまで送ってくれてありがとう。あんまり長居するとチカくん怒っちゃうかもしれないから、しっかり手伝ってあげてね」
しかし、葵がそう言っても二人は動こうとはしなかった。
「チカなら多分大丈夫。それもわかってるんだと思うから」
「(こくこく)」
ツバサは首を傾げているが、三人の雰囲気がおかしいことに気づく。
「うん。そうだと思うよ? でもツバサくんもいるし、わたしなら大丈夫! それよりも、わたしは今一人になっているチカくんがファンの子たちに襲われないかが心配だっ!」
若干二人もそう思ったのか頷いていた。あの恰好じゃ逃げるに逃げられないだろう。すでに一回躓いているし。
「だから、チカくんの方へ行ってあげてくれ。何かまた気づいたことがあればすぐに知らせるから」
大丈夫と何度も念を押して言ったら、二人は渋々だったが生徒会室から出て行くことにしたよう。でも、ハッと気づいたように、オウリが文字を打ちながら葵のところへ戻ってきて画面を見せる。
その打たれた文字を見て、最初はどういう意味なのかわからなかった。でも、彼がウサギになっている耳を触りながら教えてくれたので、本当に彼はやさしすぎるなと思ってしまった。
「うーんそういう意味じゃなかったんだけど……でも、ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」
九条兄弟には何が何だかわからなかったと思う。二人は首を傾げているが、その間にいた葵とオウリの顔は、とってもやさしい笑顔だった。



