男が一瞬固まったのを、葵は見逃さなかった。
「誰や、その彼て」
「何しらばっくれちゃってるんですか。わたしを彼から離したのは、他でもないあなたたちでしょう」
今度は睨むように目を細めた。
「そいつらが口割ったんか」
「そんなのちょっと考えればわかることです。だって彼は、わたしがあなた方に襲われる前……ここの三人に襲われたと知った時から、もう様子がおかしかったのだから」
そう言って葵は、なんとか時間稼ぎをしようと話し出す。流石の葵でも、この人数相手に庇いながらでは、到底無傷では済みそうになかったからだ。
「彼の様子がおかしくなったのはその頃から。何か考え事をしている……いつもそんな感じでした。でもあなた方に襲われてわたしが怪我をしてからは、明らかに彼はわたしを避けるようになった」
「そうかー。それでえ?」
男の返答に違和感を覚えながら、葵はさらに続けた。
「彼はわたしに『外では一緒にいられない』と言った。だから、送り迎えは彼は絶対にいなかった。そうしたら、あなた方は現れなくなった。彼が、わたしのそばを離れたから。……違いますか」
「違うなあ」
返ってくる即答に顔を顰める。それ以外に理由が考え付かなかったからだ。
「俺らは別に、あいつが嬢ちゃんから離れたから襲わんかったんちゃうねん。あんたはもう忘れてもうたんかなあ」
「何をですか」
男たちは、飛びかかる準備に……入った。
「嬢ちゃん、あんたを殺すことが、俺らに課せられた仕事。そして文化祭は最高の好機。……てことでや」
関西弁男は、すっと静かに手を上げた。
「――ヤレ」
それが合図となり、男たちは一気に飛びかかってきた。
「(ちょっと待てえーい! まだ体が温まってないんだってばよ!)」



