すべてはあの花のために③


 葵が茂みに向かって尋ねると、案の定十人程度の大男たちが現れた。


「お嬢ちゃん久し振りやな。元気しとったか~?」


 あれだけ痛め付けた関西弁男も、すこぶる元気そうだった。


「ひ~! なんであんたがこんなとこに?!」
「お、俺らはもうあんたらとは縁切っただろ⁉︎」
「こ、殺さないで~……!」

「(この人たち全然役に立たない……)」


 ため息を吐いていると、ヒエンが葵を庇うように立つ。


「えらい奴らに目ぇつけられてるじゃねえか」

「それほどでもあります」


 彼らは、じりじりと距離を詰めてくる。


「おっさん。俺らそこの嬢ちゃんに用事あんねん。長生きしたかったら、手え出さんことや」

「おいおい。俺まだ若えよ」


 そんな会話をしている前に、葵が一歩前に出る。


「何やってんだ。下がれお嬢ちゃん」

「いいえ下がりません。そして、あなたをこれ以上巻き込むつもりもありません」

「もう十分巻き込まれてるぞ」

「では早く逃げてください」

「それはできねえ。あいつらにあんたのこと、何があっても守るっつったしな」

「こんなことになるとは思わなかったでしょう? 精々彼らがわたしに襲いかかってきたら……ぐらいにしか思ってなかった」


 葵はそう言ってびくびくしている三人を指す。


「間違っちゃいねえが」

「ですから、早く逃げてください。ここはわたし一人でなんとかなります」


 そうしていると、男は咥えていた煙草をこちらへ指で弾いて飛ばしてきた。


「前回は大誤算やったからなあ。まさか大の男六人全員、お嬢ちゃん一人にやられるとは思いもせえへんかったから」


 ヒエンは驚きを隠せないようだった。


「……お嬢ちゃん。あんた一体……」

「彼らの友達。それだけです」

「そのお友達も結構強かったと思うで? まあそのチビ助よりはこっちんが強かったみたいやけどな。でもそれを、嬢ちゃんはあっという間に片しよった。……そんなようわからんお嬢ちゃんを、依頼主は大層嫌っとってん」

「そうですか。わたしは、()を苦しめる依頼主が途轍もなく嫌いですけどね」