キサは葵の様子を見て、意を決したように無線を飛ばした。
「……あ。もしもし秋蘭? ちょっと女子二人は閉祭式不参加で~。……なんでかって? それは女同士の秘密の話だから言えない。わかったら、さっさと男子共でやっといて。終わったら連絡ね。以上!」
キサは早々に無線の電源を落とした。もちろん葵のも。さらに更衣室の扉の鍵もきっちり閉めた。
「き、キサちゃん? 別に後でもいいし、そこまでしなくても……」
「あっちゃんちょっと待ってて。すぐに――」
キサがそう話していると、急に女子更衣室の扉が――ガチャガチャッと音を立てだした。
心霊現象かと思ったが、扉の向こうから男子たちの声が聞こえたので、ほっと小さく息を吐く。
「ね? 言ったでしょ?」
「う、うん。みんな怖いね」
「ほんとは隠しカメラとか盗聴器もないか調べたいぐらいなんだけど……っ」と、キサは握り拳を作っていた。そこまで徹底的に排除してくれて、……キサが友達でよかったと、心底思った。
「それで? どうしてそんなことになってるの?」
「う、うん。ちょっと、恥ずかしいんだけど……」
葵は先程までの話を、言えるところまで話すことに。
「その人のおかげでね? わたし、人を好きになってもいいんだって思ったの」
「あっちゃんは、ダメだと思ってたのね」
深くは聞いてこない辺り、キサもよく見えている。流石はあの人の娘だ。
「……あっちゃんは、その人が好きなの?」
「……? どうして?」
「だってキスとか。こういうことしてるのを止めない辺り、そうなのかと思って」
「……よく、わかんない」
葵がそう言うと、キサがぎゅっと抱き締めてきた。
「うん。今はさ、それでいいと思うよ? だってその人、顔隠してたんでしょう? あっちゃんのことそんなに好きなら、ちゃんと自分の正体明かせばいいのにねー」
「……ふふ。そうだね。ちょっと可愛いくて、泣き虫な人だったよ」
「え? 可愛かったの? 泣いてたの? もっと強引な奴かと……」
「ううん。すっごくいい人だった。彼のおかげで少しだけだけど変われたから。……だからキサちゃん。さっきはあんなこと言って、ごめんね」
「――! あっちゃん……うんっ。全然いいんだよそんなこと! あっちゃんが幸せなら、あたしも嬉しいんだからっ」
キサはそう言ってくれて、葵をまた抱き締めてくれた。
二人はしばらく笑顔で抱き合った。



