すべてはあの花のために③


 適当にあしらわれた葵は、ヒナタとオウリと生徒会室へ向かった。


「ちょっと寄りたいところがあるんだけどいいかな?」


 そう言って、葵が二人を連れてきたのは空き教室。ここは誰も使用しておらず、体育祭の時の写真が壁一面に貼られている。


「……これが見たかったの?」

「??」

「うん! わたしのアルバムに収めようと思って!」


 アルバムの存在を知っているヒナタはうげ……っと言う顔になるが、オウリは首を傾げているだけだ。


「(〇番、〇番、〇番、〇番、〇番、〇番…………)」


 葵は順番に廊下側から、


「(〇番、〇番、〇番、〇番、〇番、〇番…………)」


 窓際に向かって……


「(〇番、〇番、〇番、〇番、〇番、〇番…………)」


 見ていって――――


「(〇番、〇番、〇番、〇番、〇番、〇番…………)」

((いやいや多すぎない? 覚えられるの?))

「(ま、大体の位置とかでね~)」

((そ、そう。そんなに欲しいのね……))


 葵は一回りして、大体みんなが写っている写真を把握したので、また欲しいのは書きに来ようと思った。


「今書かなくてよかったの?」

「?」

「だって二人にバレちゃうじゃん。恥ずかしいよ」

「いや、小さい頃の写真持たれてるオレらの方がハズいし」

「……!?」

「あれはもう厳重に保管してあるからな! わたしの宝物だ!」


 二人は目を合わせて、大きなため息をついた。

 そうこうしているうちに、あっという間に生徒会室に着いてしまった。流石に誰もいないだろうと思っていたら、雪のように白いドレスを着たスラリとしたとても綺麗な人が、そこに佇んでいて、葵は思わず叫ぶ。


「雪の女王さんがおいでなすったあーッ!!」


 葵の声に三人の方がビックリしてた。
 流石に誰もいないと予想していたから、こんなべっぴんさんが――――。


「って、なんだあー。ツバサくんじゃないかー」

「い、いきなり叫ばないでよ。ビックリしたじゃない」
「同じく」
「(コクコク!)」


 生徒会室の窓際にもたれかかり、愁いの表情で黄昏れていたのは、雪の女王に扮したツバサだった。


「(にしても美しすぎるんですけど。どういうことですかね?)」


 クオリティーの高さに、もはやビビる葵である。