すべてはあの花のために③


「(う~ん。やっぱり上手くいかない……)」


 それから無事、誰とも擦れ違うことなく。ある意味リアル変態仮面に襲われた葵は、女子更衣室へと辿り着き、“例のマーク”を消そうと奮闘中であった。


「(んーよく見えないんだよね。今日化粧道具持って来ておいてほんとよかった)」


 頑張って隠そうとしていても、葵の見えないところにつけられてたら元も子もない。


「(だって、告白されただけであんなに落ち込むんだぞ? みんなリア充がそれだけ羨ましいってことだ。これも消しとかないと絶対うるさい)」

((そんな理由じゃナイと思うケド))


 もうすぐ21時。後夜祭の閉祭式まで時間がない。
 その時、更衣室の扉が開いた。救世主の登場である。


「ヘルプミーキサちゃーん!」

「おお?! どうしたんだあっちゃん!」


 葵はウィッグを外し、ドレスはもう一着持ってきていた明るい色のものに着替えていた。もちろんパンプスも別のものだ。


「お恥ずかしながら、キス魔に襲われたので隠すの手伝ってくだしゃい」

「なっ、なんだってえーッ!?」


 キサは叫んで葵の首元を見た。


「え。ど、どえらいことになってるぞ?」

「そうなんだ。頑張って今塗りたくってる」

「ちょっと待って。何人にやられたの? それくらい付いてるぞ?」

「そこまで飢えてないよ。一人だよ」


 キサは頭を抱えていた。


「あっちゃん、誰にやられたんだ」

「名探偵燕尾服仮面だ」

「名探偵燕尾服仮面だってえ?! ……いや、誰よそれ」

「仮面着けてたからわからなかった」

「何だって?!」

「だって全然見覚えなかったんだもん」

「なんで連絡しなかったの!!」

「うーん。……誰にも言わない?」