「(う~ん。やっぱり上手くいかない……)」
それから無事、誰とも擦れ違うことなく。ある意味リアル変態仮面に襲われた葵は、女子更衣室へと辿り着き、“例のマーク”を消そうと奮闘中であった。
「(んーよく見えないんだよね。今日化粧道具持って来ておいてほんとよかった)」
頑張って隠そうとしていても、葵の見えないところにつけられてたら元も子もない。
「(だって、告白されただけであんなに落ち込むんだぞ? みんなリア充がそれだけ羨ましいってことだ。これも消しとかないと絶対うるさい)」
((そんな理由じゃナイと思うケド))
もうすぐ21時。後夜祭の閉祭式まで時間がない。
その時、更衣室の扉が開いた。救世主の登場である。
「ヘルプミーキサちゃーん!」
「おお?! どうしたんだあっちゃん!」
葵はウィッグを外し、ドレスはもう一着持ってきていた明るい色のものに着替えていた。もちろんパンプスも別のものだ。
「お恥ずかしながら、キス魔に襲われたので隠すの手伝ってくだしゃい」
「なっ、なんだってえーッ!?」
キサは叫んで葵の首元を見た。
「え。ど、どえらいことになってるぞ?」
「そうなんだ。頑張って今塗りたくってる」
「ちょっと待って。何人にやられたの? それくらい付いてるぞ?」
「そこまで飢えてないよ。一人だよ」
キサは頭を抱えていた。
「あっちゃん、誰にやられたんだ」
「名探偵燕尾服仮面だ」
「名探偵燕尾服仮面だってえ?! ……いや、誰よそれ」
「仮面着けてたからわからなかった」
「何だって?!」
「だって全然見覚えなかったんだもん」
「なんで連絡しなかったの!!」
「うーん。……誰にも言わない?」



