そんなことを考えていることに気づいたのか、両頬をしっかり包み込み、彼はまるで言い聞かせるように意思の強い瞳で見つめてくる。
「私は必ず、あなたの好きな人になってみせますよ」
一体何を言い出すのかと思ったら……どうしてそんなことを、嬉しそうに話すの。
「とても負けず嫌いなもので。……絶対にあなたを、振り向かせてみせます」
「――……!」
まさか一日に二度も、同じような台詞を言われるなんて。
「この恰好は今夜限り。この姿であなたに会うことはもう二度とないでしょう。それでも私は、必ずあなたの傍にいて、あなたのことをちゃんと見ています」
「(……ストーカーさんなのかな)」
「ストーカーではありません」
流石、よく見てるだけのことはある。突っ込みも素晴らしい。
そっと差し出された手に自分のそれを重ねると、彼はゆっくりと立ち上がらせてくれた。満足そうに葵を見つめた後、続いて彼はシルクハットの中から月明かりに輝くストール取り出し、葵にふわりと掛けてくれる。
「きっ、……奇術師さん、なのですか?」
「さあ。どうでしょう」
意地悪くにっこり笑っただけで、それ以上のことは言わなかった。
「(そんな顔されると。いつもはちょっとムカつくはずなのに……)」
きっと、このストールのせいだ。こんなに体が熱くなってしまうのは。
そう思いながら、ぎゅっとストールを顔の方まで引き上げ俯いて、彼の視線から逃れる。そんな葵を見て、彼はまた満足そうに微笑んだ。
「私は必ず、あなたを幸せな道へと導きましょう。あなたの道を変えることができたその時……改めて、私の自己紹介をさせてください。もちろん『あなた』もですよ」
「――! ……あなた、は……」
――もしかして『わたし』のことを知っているの……?



