少し経っても離そうとしなかったので、重くないかと尋ねようとした。すると彼は、小さく囁くように呟いた。
「……私は、絶対に諦めませんよ」
「えっ?」
「私は、絶対あなたを変えてみせます」
「――!」
溢れる自信に一瞬驚いたけれど。「ほんとうにできそうですね」と、葵は小さく笑った。
けれど彼は至って真剣そうに、顔の前で指を一本ずつ立てていく。
「話を聞く限り、どうやら」
気持ち。
それから、運命と決めた道。
最後に、考え。
「これがあなたの幸せを邪魔しているようだ」
「え?」
改めてそう言われて、思わず葵も考え込む。
「私はあなたの気持ちだけではなく、運命も道も、そして考えも。絶対に変えてみせます。……そうすれば、あなたも幸せになれるでしょう?」
彼の言葉を聞いて、ああそうかと腑に落ちる。
「私がそんな悲しいものからあなたを、必ず断ち切ってみせましょう」
シルクハットを手繰り寄せた彼は、そこからあるものを取り出す。ゆっくり現れたのは――真っ赤なハイビスカスだった。
「私と賭けをしませんか?」
葵の髪へ、そっと花を飾りながら彼はふわりと笑う。やさしい花の香りがする。
「ハイビスカスは【1日花】と言われ、一日でしぼんでしまうとても可哀想な花――けれど新しい花をどんどん咲かせていくので、この花には『常に新しい美』『新しい恋』という花言葉があります。他には『勇ましさ』や『勇敢』。あなたにぴったりだ」
そうだ。だって、一日というこの花も、短い間でも綺麗に咲くのだから。



