どれくらいそうしていただろう。葵がだんだんと立っていられなくなってきているのに気づいたのか。二人の間に伸びた銀色の糸が、名残惜しそうにぷつんと切れる。恥ずかしさからか、或いは息が上手くできかったからか、葵は首まで真っ赤になっていた。
「なんで抵抗、しないんですか」
話す度に触れ合う。少しだけ拗ねたような、彼の唇が。
「なっ。……なんで。しょう……」
触れ合ったままで恥ずかしい。
でも、離れていって欲しくない。
「どうして私に、応えてくれるんですか」
ちゅっと音を立てて、啄むようなキスが落ちる。
「ん。……わ。わかんない。です……」
必死に言葉を返すと、「そうですか」と彼は小さく相槌を打ちながら、その言葉の答えを探すように、葵の耳に指先を這わせた。甲高い声が漏れる。彼が触れる度にぴくりと体が震えた。
「こうされるのは嫌?」
反応を見て楽しんでいるのか、今度は葵の耳を重点的に攻めてくる。それでも無理矢理ではなく、葵の様子を見ながら。ゆっくりと慈しむように、彼は耳の裏から首筋へと指を這わせた。
「だめ。塞がないで」
自分の声じゃないような、高い声が出てしまうのが恥ずかしくて、葵は口を塞いでしまいたかった。けれどやさしい口調に抵抗する気も失せてしまい、葵の手は彼の大きな手に包み込まれてしまう。
「……あっ。や、ん……」
彼の指先が心地よくて。完全に拒否することはできなかった。そんな葵の様子をわかっているのか、彼は耳へ唇を寄せた。
「ひゃあっ。……! っ。やあ……っ」
攻め立てられた葵は、もう足に力が入らなかった。立っていられないと言うのに、それでも彼は逃がしてくれない。次第に唇は、ゆっくりと首筋へと降りてきた。
ちゅっと音を立てたかと思えば、時々ちくっと痛む。何をされているのかわかっていても、酸欠でぼうっとしている頭では何も考えられない。下手をすれば、その甘い痺れをやめて欲しくないと思うほど。
「……あ。暴走しすぎた」
葵の首が途轍もないことになっていたのか。彼は一瞬素になって、小さくそう漏らした。
「な、……なんで止めないんですか」
彼は恥ずかしそうに尋ねた。まるで葵に非があるように。
葵はとろんとしたまま答えた。素直に思ったままを。
「……。とめて。ほしく、なくて……」
「――! ふう。……すみません」
一瞬顔を真っ赤にした彼は、そう一度謝罪を入れるや否や、今度は貪るように口付けを落とした。もっと深いところで繋がりたいと、彼は葵の口内で暴れ出す。しっかり絡め取られた葵も、必死に彼に応えた。葵が苦しそうになったら、キスは止めるが唇は当てたまま。
そんなことを何回か繰り返していくうちに、お互いおかしくなって目が合うと笑った。そのうち彼は葵の腰に両腕を回して、葵は背の高い彼に頑張って腕を回して、お互い頬を染めながら、口付けを交わした。



