「……ほら、やっぱりあなたは可愛らしい」
一言零して、ダンスが再開する。
「(……な。なな。……ななな……)」
確かにミスコンでも真っ赤になっていた。でも今回は、度合いが違いすぎる。葵もはっきりと自覚していた。
「(う。うれしい……けど。恥ずかしい……)」
そんな葵を横目で見た彼は、ふっとやさしく笑った。
「きっと今のあなたが本当のあなたなのでしょう。だから、闇に消えてしまいそうなあなたをなんとかしてあげたいと、そう思ったんです」
愛おしそうに、見つめられる。
「あなたの笑顔が見られて嬉しかった。……ああ、やっと笑ってくれたって」
「そっ。それは……よかった。です、ね」
そんな瞳でそんな言葉を言われても、耐性のない葵には尻すぼみになりながら言うのが精一杯。
その様子を見て、彼はやっぱりやわらかく微笑んだだけ。
「(この笑顔を見ているだけで、どうしてこんなにも心があたたかくなるんだろう……)」
じんわりと心地よく脈を打つ胸の鼓動を聞きながら、既視感を覚えていると「私は、あなたの考えを変えられたでしょうか」と彼が零す。
幸せは犠牲では生まれない――そう伝えたいのだろう。
「申し訳ありませんが、わたしの考えは変わりません」
「冷たくても?」
「はい」
「真っ暗でも?」
「っ、はい」
「何も、見えなくなっても?」
「……ッ、はいっ」
「そんなにつらそうなのに」
葵は俯いていた顔を上げた。そこには、葵よりもつらそうな顔をした彼が葵を見下ろしている。
「今のあなたは、本当に笑えているのでしょうか。私にはどうしても、あなたが選ぶ道に私の幸せはないんじゃないかと。そう思えて仕方がありません」
「……どう、して……」
「あなたがもしもあの花なら、私はもうその傍にいるたくさんの花の一つだ。……だったら、一生幸せにはなれません」
彼はぴたりとダンスを止めた。
「あなたはひとときの幸せでいいんですか? この一瞬でも幸せならそれでいいと? ……そんなの、私が許しません!」
彼の力強い腕に、葵の体がきつく抱き締められる。強く引かれ、つま先立ちになると、ふわり【いい香り】が鼻を掠めた。
「い、いきなりどうされたんですか」
「いきなりなものですか。こんなにも考えを改めて欲しいのに……どうしてこうも、あなたは頑固親父並みに頑固なんですか。手強すぎでしょう」
近くの壁に、とんと葵の背がつく。
「どうしてそんな道を選ぶんですか。私が変えてみせますから」
「……どうして、わたしにそこまで……」
見下ろす彼は、やはりどこか苦しそうで。少し、言葉に詰まった。
「……わかりません。けれどあなたを見て、惹かれたのは事実です」
「えっ? で、でも、あなたはミスコンで優勝した彼女を好いているのでしょう? それならわたしなんか放っておいて、その気持ちを彼女に伝えた方が――」
「その彼女が今こうして目の前にいるのに! 気持ちを伝えているのに! どうしてあなたはこう頑ななんだ!」
「――ッ!」
い、一体いつから気付いて……。



