そして気付けば時刻は19時半。
「(……あと、一時間半か)」
体調が落ち着いた後、ドレスに着替えた葵は仮面を着けてダンス会場へ来ていた。【願】から生まれたこの文化祭は、本当に大成功と言っていいほど、みんなの表情を明るくさせていた。
「(でもまだ、『明日』は終わってない)」
葵はポケットに忍ばせたスマホにそっと触れる。
コンテストでは、結局何も起こらなかった。それとも向こうが仕掛けようとしてもできなかったのか。それなら、本当にチカゼのおかげかもしれない。
葵は小さく感謝を告げながら、会場の隅でその存在を消していた。落ち着いたものの、本調子ではなかったからだ。
「(きっと、みんなはわたしだってわかんないだろうな)」
黒い長髪に黒のドレス。真っ赤なルビーのネックレスに、不吉な真っ赤な赤い靴がその存在を主張する。
「(愚かなわたしには、これぐらいがちょうどいい)」
黒く煌びやかなデザインの仮面を着け、真っ赤な口紅を引き、葵は闇に溶け込んでいた。



