「(……やっぱり脇役に攻められる節がある)」
葵は彼の姿が見えなくなるまで見送って、みんながしている片付けに戻っていった。けれどそこは、まるで葬式のようだった。
「あっちゃん。おかえり~」
「お、おう。ただいま~」
「彼、何の用事だったの~?」
「えーっと。告白? をされたと思います」
そう言うや否や叫び声を上げる男たち。しかも彼らは、危うく楽器を落としそうになっていた。借り物だから絶対壊しちゃだめだよそれ。
「アオイちゃん、告白されてなんて返事したの……?」
「え? そんなこと気にしてるのカナデくん」
そして早く答えないもんだから、変な勘違いした男たちは葵からゆっくりと距離を取り始める。
「……どうする?」
「きさチャンの言う通りになっちゃったよお」
「なんで脇役にとられないといけないのよ」
「(いじいじ……)」
しゃがみ込んで小さくなった四人は、暗い顔で話している。みんな人差し指を床につけてどこかいじけているようだ。
「キサちゃん。わたしは何かしたのかね」
「正直に答えてあげたらいいんだよー」
「(そうか。みんなやっぱり、彼のことを格好いいと思って……)」
そんな冗談めいたことを一度振り払い。葵は顔を顰めながら、「ごめんなさいって言ったんだけど……?」と一言。囁くように小さく言っただけだったのに、バッと顔を上げた彼らの目は何故か気持ち悪いほどキラキラ輝いていた。四人のテンション急上昇に、若干変人変態の葵でさえ引くほどだ。
「ほ、ほら。早く持って行かないと。1年生組が大変だから」
そして楽器を片付ける時も、その後体育館に行く時も、みんなは金魚の糞みたいになってついてきた。しかも怖いぐらいの超笑顔で。
特にアキラ。キャラ完全崩壊だから。カナデも。もうどうでもいいのかな、すごいくっついてきるけど。
「(まあ後は桜生だけの後夜祭だから。一般の人たちはもうほとんど残ってないみたいだし)」
周りを見渡しても、生徒が自分たちの出し物を片付けているだけで、私服を着ている人たちはいない。
「(あとは……カナデくんみたいに、しつこくナンパしている人たちぐらいか)」
葵は、そんな彼らの様子をじっと横目で見て、体育館へ向かう足を早めた。
「……あっちゃん?」
少し距離をとっていたキサは、そんな葵の様子が気になったようだ。



