「本当にごめんなさい。ちょっとわがままな動物がいたもので」
(※アキラは動物に昇格した)
「それは全然いいんだけど……みんなから愛されてるんだね」
待たせたにもかかわらず、彼はやっぱりにこっと笑ってくれた。
そしてすぐ、少しだけ姿勢を正す。
「今の男の子たちの中に、君が好きな人っているのかな。それか、今はいなかった人たちの中かな」
「え? それは、みんな大好きですけど……」
「ううん。恋愛として好きな人。……もしかして、考えたことない?」
「えーっと」
「それなら、俺が立候補してもいいですか? どうみょうじあおいさん」
フルネームを呼ばれたことはもちろん、顔を真っ赤にしながら、一生懸命伝えようとしてくれている彼の気持ちが、決して冗談ではないことは葵にもすぐにわかる。
「さっきはあんなこと言ってくれてありがとう。君は、俺が幸せを分けてあげるお手伝いをしただけって思ってるかもしれないけど……お、俺がキスしたのは、君のことがあの一瞬で愛おしくなってしまったからで」
「えっ」
「きっ。君のことを幸せにしたいって、そう思ったからなんですっ!」
「――……!」
「だから、もしよかったら俺と――」
「ごめんなさい」
葵は、彼が何かを言い切る前に頭を下げて言葉を紡ぐ。
「わたしには、あなたを幸せにすることができません」
「……最後まで言わせてくれたっていいのに」
「お気持ちはすっごく嬉しいです」
「……そっか。じゃあ、お友達から頑張ることにしようかな」
「え?」
彼は葵の手を取る。にこっと笑顔を付けて。
「どうしてか、君とはまた会える気がするんだ。これは俺の勘。それでもし、本当に会えたら……俺のことをちゃんと見て欲しい。これは、俺の賭。……駄目、かな」
「……では、もしお会いすることがあれば」
葵は、少し悩んだ後そう言うと、彼は本当に嬉しそうに笑った。
「本当? どうしよう。俺、すっごく嬉しい!」
「で、でも、恋愛対象として見るかはそれからで」
「見ようとしてくれるだけで十分だよ。それに俺、こう見えて負けず嫌いなんだ。……だから、次会えたら改めて俺の自己紹介させてね」
彼はそう言って笑顔のまま葵に手を振って帰って行った。



