すべてはあの花のために③


 三人は歌い終わって深く礼をする。
 難しい歌だ。きっとわからない人も多いだろう。


「(それでもわたしは、今がとっても幸せなんだ)」


 きっと伝わる人には伝わる。そんな歌だから。

 拍手が起こり、ふと視線を感じて顔を上げる。先程の彼が、温かく見つめてくれていた。
 それからみんながステージに戻ってくる。肩にぽんと手を置いて、ヒナタはギターを収めに行った。葵の隣に立ったキサが葵の目元に布を押しつける。

 ――――……ああ、そうか。泣いて、いたのか。

 この時初めて気づいた葵はぐっとハンカチを押さえつけて切り替える。


『それでは! ここからはラストスパート!』


 キサがそう言うと「エー!」という観客からの声が聞こえる。


『ありがとう! その声大好きー!』


 ここからは少し面白くて、ノリのいい曲を一曲。そして勢いがあり、感動するような曲を最後に葵たちのライブは終わりに向けて突っ走る。
 少しふざけたその曲は、コール&レスポンスが入っていて、会場が一体になる曲だ。ダンスをしている三人も、会場を盛り上げようと体全体で表現してくる。
 バンドメンバーもみんな笑顔で笑って、演奏をしない間は会場を盛り上げた。