何を話しているのだろうと、ヒナタがギターのチューニングを始めたところで、葵が戻ってくる。
「ヒナタくん、ギター触ってどうしたの?」
「オレも一緒に出る」
「え。バラードに?」
「ついでにカナも道連れにするつもり」
彼はそう言って、今はまだ出番じゃないカナデに無線を飛ばす。
「……うん。じゃあそういうことだから、続けて出てね」
「ヒナタくんも歌うの?」
「そうなるね」
「カナデくんは?」
「入ってくるでしょ。なんだかんだ」
無線を戻しながらヒナタはため息をついていたけれど、葵にとってこれ以上心強いことはない。
「ありがとうっ。最高の思い出だ!」
満面の笑顔を残し、るんるんとアカネとオウリのところへ行った。
「……おーい。ヒナタ~?」
「……何」
「今の自分の顔、鏡で見てこいよ」
チカゼがそう言うが早いか、ヒナタは猛ダッシュでカーテンに隠れた。
「お前そんなキャラじゃなくね?」
「ちょっと精神統一中なんで」
「一応それ、オレかカナが担当してんだけど」
「そんなん、あいつ次第でみんなこうなるでしょ」
くるりと丸まったカーテンに、チカゼはふっとやさしい笑みをこぼす。
「お前に可愛いとこがあって、オレは嬉しい」
「うっざ」
「散々いじられてるからな。これぐらい我慢しろよ」
「何言ってんの。100倍返しだよ」
「……スンマセン。今のなしで」
「バッチリ録音したので無理です」
「はあ! 嘘だろ!?」
精神統一が終わったヒナタは、カーテンから出てきてボイスレコーダーをチカゼの目の前に突き出す。
「おいおい。最初に『録音機器は回収します』って言っただろうが」
「それは観客」
「くっそ」
「オレに勝とうなんて一生無理な話だよ」
そう言ってヒナタは、葵が歌う曲の練習をし始めたのだった。
「……ふはっ。すっげえテンション高」
ヒナタの微妙に動く感情に、つい嬉しくなるチカゼであった。



