『はあーっ。ありがとー!』
ここからはバラード。キサ、カナデ、葵の順番で一曲ずつ披露していく。キサと葵はギター、カナデはキーボードで弾き語り。
まずはキサにバトンタッチして、みんなは左右の袖に捌ける。葵がいるのはオウリ、アカネ、チカゼ、ヒナタ側。少しだけ喋ってバラードを歌い始めたキサを、みんなで見届けた。
「(……何もない。気のせいだ。絶対大丈夫だ)」
しかし葵はステージを見ず、観客席を睨むように見つめていた。
「おい」
声を掛けてきたのはチカゼ、その横にはヒナタ。
「いるの」
ヒナタがそう聞いてくる。でも気を遣わせたくない。
「ううん? ただ、どんな人がいるのかなって思って見てただけ」
葵はキサのステージを見に行こうとするが、パシッとチカゼに手を掴まれる。
「ばっか。手に力入ってんぞ」
「武者震いだ」
「突っ込みにくいボケ」
「い、今から一人でステージ立たないといけないから。だから」
「バラード、お前飛ばせ」
「ううん、行くよ」
「何言ってんだよ!」
チカゼは葵に掴みかかってくる。でも葵は笑顔で答えた。
「だってわたしは今、最高の思い出作ってる最中だからね!」
そう言い残し、葵はチカゼたちの元を離れていった。
それが葵の強がりだということを、二人が気づかないはずがなく。
「……ヒナタどうだ。お前なんかわかるか」
「いや。やっぱりあいつしかわかんないみたい」
「だよなーやっぱり。オレらが捜そうとしても駄目か」
「だからって、あいつ一人にはさせらんないけど」
「でも、あいつは出るって」
「オレも行ってくる」
「えっ?」
そう言うや否や、ヒナタは予備のギターを準備し始める。
「おまっ、マジで言ってんの?」
「え? そうだけど」
「なんでギターも弾けんだよ」
「え? オレだから」
「歌うん?」
「……やっぱりそうなる?」
「いやそうだろ」



