すべてはあの花のために③


『みんな~! ありがとー!』


 基本キサがMCを担当。みんなに振っていく。
 3曲が無事に終了し、ここで一旦休憩に。


『どうも! こんなにたくさん入ってるだなんて思いもよらなくて、すごいビビってる生徒会メンバーでーす!』


 ちゃんと笑いを入れてくるキサを横目に、会場に視線を走らせる。「そんな恥ずかしいもん誰が見に行くか」と言っていたキク先生は、壁にもたれていた。


「(やれやれ~。愛されてますね~?)」


 自然と笑みが零れてしまったところを、MCのキサが見逃さなかったよう。


『おー? あっちゃん何かいいことでもあったのかーい?』


 そんなん正直に言ったら、あんたら大変なことになるぞー。
 そう思って、じーっと彼女と彼を交互に見る。それに気づいたキサが慌てて『や、やっぱなしでいこー!』と顔を赤くするものだから、それがまたおかしくて笑ってしまった。
 会場は、な~に? って興味が湧いてしまったみたいだけれど。


『キサちゃん。ただ、“愛されてるな~”って思っただけですよ』


 メンバーが一斉に会場内でキクの姿を捜し出す。キクは危機感を感じたのか、しゃがんで姿を隠していた。それはそれでつまらないけれど。


『いやーでも本当に愛されてるよねー。俺こんなに大人数の女の子たちのこと、愛してあげられるかな~?』


 みたいなことをカナデが喋ると、「きゃあー!」って女性たちの割れんばかりの奇声が発生。


『いやーそれはほんとにそう思う! みんなどこでこのライブを知ったのー?』


 会場には生徒だけではなく、私服姿の人たちもたくさんいた。


「(そういえば彼も見に来るって言ってたっけ)」


 葵は、足元にある水を飲もうと手を伸ばそうとした。


「――……ッ?!」

「……どうしたの」


 纏わり付くような、気味の悪い視線を感じる。動揺が出ないよう何事もなかったかのように水を飲んだけれど、後ろにいたヒナタは気づいたみたいだ。
 葵はライブが台無しにならないよう、「暑くてちょっとふらっときただけ」と平静を装う。


「(不味いな。ミスコンの時は、全然思わなかったのに……)」


 葵は一度自分の服を掴み、大丈夫だと言い聞かせて持ち場へ戻った。