しかしそれ以降脳内からの返答はなく、葵は心の中で涙を流しながら、こほんと小さく咳払いをする。
「それで、どうしたの? みんなして」
「いやいや。お前こそ、こんなところにどうしたんだよ」
チカゼにそう言われて、そういえばあの視線はもうなくなっていることに気づいて、なんだったのかと顔を顰めてしまった。
〈あーちゃん
もしかして何かあったの?〉
人の表情に敏感な子だ。すぐにそういうところに気づく。
こればっかりは隠せそうにない。この三人にまず伝えておこう。
「今、ちょっと嫌な感じがして。それからちょっと逃げてきたら、ここに辿り着いたんだ」
葵がそう言うと、三人はバッと茶室の戸を開けて外の様子を窺う。
「……くそっ。もう一般客が入ってきたのかよ」
「今は大丈夫なわけ」
視線を窓の外に向けたまま尋ねるヒナタに、「今はもうないよ」と言っておいた。
「やっぱり、文化祭もただじゃ終わりそうにないな」
「(コクコク)」
「あんた、ちゃんと無線持ってる?」
「う、うん。それはバッチリだけど」
でも、なんだこの感じ。これは多分、彼関係じゃない気がする。
だってそっちなら、視線は殺気で満ちて……。
「…………」
葵の表情を読み取ったのか、オウリが素早く文字を打ち込む。
〈今までにない感じなの?〉
そう言われて、葵は目を見開く。その文字に、チカゼとヒナタが反応する。
「……殺気じゃ、なかったと思う……」
そう言うので精一杯だった。思い出しただけで気持ちが悪い。あの、どこまでも纏わり付く感じ。鳥肌がなかなか治まらない。



