すべてはあの花のために③


 そこで話を切り上げて、ゆっくりと四人は立ち上がる。


「まあ納得はできないけどねー」

「え。嘘でしょカナデくん」

「当たり前だ。俺の葵が傷物に」

「いやいや違うから!」

「違うよアキくん。さっきの彼が変態に襲われて傷物になったんだよ」

「おいー! ヒナタくーん?!」


 言いたい放題言って、三人は自分の持ち場へ歩いていった。


「ドレス、綺麗だったわよ」

「ツバサくん! 本物の優勝オメデトウ!」

「嬉しくないけど」

「そうなの?」

「だってあれ、完全にアンタの優勝だったもの」

「いやいや、ツバサくんの男性ファンも増えたと思うよ?」

「嬉しくねえ」

「あははっ」


 一頻り笑い合って、葵も自分の持ち場につこうと思った。


「葵」

「ん? ツバサく――」


 けれどカーテン裏に引き込まれ、力強く抱き締められる。


「無事で、よかった」

「――! ……ッ、うんっ」

「そう言われた奴から、昨日俺が閉じ込められてたこと聞いたんだよな」


 葵は、返事をする代わりにツバサの服をぐっと掴む。


「それで、場所を教える代わりにミスコンに出ろって言われたのか」


 葵は首を振る。そうではないからだ。


「違うのか? じゃあなんて言われた。どうせ交換条件だったんだろ」

「……『何をしたのか』っていうのを、教えてもらった。そしたら、『ちょっと消えてもらった』って言ってたから」

「それはいつ?」

「チカくんの時だったから……15時過ぎ?」

「……大急ぎで、来てくれたんだな」

「つ、ツバサくん?」

「ほんと。格好いいよお前」

「えへへ。ありが――」


 葵の言葉を待たず、ツバサはぐっと引き寄せる。


「もう一回ドレス着させてやるから」

「……ひゃっ!」


 耳元でそう小さく囁いた唇が、葵の耳を掠めた。
 へたり込んだ葵の前にしゃがみ込んだツバサの瞳が、愛おしげに見つめてくる。


「……かわいい」

「な……っ。ななな……」

「なに照れてんの」

「なっ、慣れてないって言ったのに……!」


 取り敢えず顔を見られまいと、葵は「ツバサくんのいじわる!」と捨て台詞を吐いて、ツバサの肩に顔を埋めて逃げた。


「なあ。昨日の続き」

「え? 昨日の続きって――」


 何のことかと、尋ねようとした葵の頬は、ツバサの手に包み込まれていて。


「……勝手に奪われやがって」

「つ。つばさく――ぐふっ?!」