すべてはあの花のために③


「(それにしても、本当にみんなとお揃いのものが着けられるなんて、夢みたい……)」


 葵はすごく嬉しそうに、さっきもらったミサンガを眺めていた。そうしていると、「アオイちゃん」と控えめに名前を呼ばれた。目線を下げると、未だ律儀に正座をしている四人が、葵をずっと見つめていた。


「ん? なに? カナデくん」


 彼ら四人は、どうやら聞きたいことがあるみたい。お互いを見遣って、代表してカナデが尋ねた。


「ど、どうして。さっき顔、赤かったの?」

「へ?」

「指輪の交換も、お姫様抱っこも……おでこにキスされたかと思ったら、今度は唇に! しかも二回!」

「え、えーっと……」


 ミサンガのせいですっかり忘れていた葵は、結構焦っていた。実のところ、ぶっつけ本番で体が勝手に反応しただけなんだけど……そう言ったところできっと、彼らは納得しないだろう。
 加えて彼らの表情は真剣そのもの。少し恥ずかしそうだが、先程とは違ってきちんとした答えが欲しいらしい。


「んーっと。じゃあ、ちゃんと答えるよ? 時間迫ってるけど」


 葵はゆっくり四人が納得するように話し出す。


「か、顔が赤くなったのは、ちょっと恥ずかしかったから。わたし『可愛い』って。あんまり言われ慣れてないから……」

「へ?」


 赤くなってしまった顔を冷ますように手で扇いで、ふうと小さく気持ちを整える。


「さっき出なければいけなくなったって言ったけど、本当は『出ろ』と言われたの。途中で条件を変えられたけれど、それを言った人は最初優勝を条件にしようとしてて」

「変えた条件って?」

「優勝は必ずしもじゃなくていいって。でもミスコンには出ろと。それだけ言われたけれど、……優勝しなければ何かされるんじゃないかと思って」


 ヒナタの質問に答えた葵は、静かに俯いた。


「だから、あんなことしたのか」

「うん。そうだよアキラくん」

「あいつのこと、好きなんじゃなくて?」

「そんなわけないじゃんカナデくん。今日初めて会った人だよ?」

「でも相手は満更でもないような顔してたけど?」

「わたしには、ツバサくんたち以上に大好きな人なんていないよ」

「じゃあなんでキスしたの」

「……優勝を条件にされていたから、最後までしないといけないかもと思って」

「なんで口にしたの」

「さ、されたんだけど……」

「なんで逃げなかったの」

「……ジンクスのことがあったから、しなくちゃと思って」

「ッ、だからって……」

「ひ、ヒナタくん……?」

「いや、もういい。わかった」