すべてはあの花のために③


「わたしはみんなが大好きです。わたしには、みんなより大好きで大切で、絶対に失いたくないと思う人たちなんてもうきっと、一生現れない。そんなわたしの大好きな人たちと、最高の思い出を一緒に作りたいと思ってるんですけど……ダメですかね?」


 もう最後の方は笑ってしまった。
 だって、みんなも笑ってたから。


「そんなの当たり前だよ! あおいチャンっ」

「(こくり♪)」

「手伝うって言ったんだ。これぐらいお安いご用だっての!」


 アカネ、オウリ、チカゼの三人は立ち上がる。そして。


「これ、あおいチャンにプレゼントフォーユー!」

「♪~♡」

「それとお前らにもな」

「……え。これって……」


 そう言って彼らが紙袋から出したものは――葵がフリマで見ていた、あのミサンガだった。


「えー! これどうしたのー!」

「フリマで買ってきたんだよ~きさチャンっ」

「(コクコク!)」

「何でこんなの買ってきたのチカ」

「あ? ああ、それならあいつが――って、え? おいっ! なんで泣いてんだよ!」


 チカゼが、葵の方へダッシュで駆け寄る。指差そうとしていた葵が、声も上げずぽろぽろと涙を流していたからだ。


「え? ……どう。したの。ちかくん」

「――チッ」


 気づいていないのは葵ただ一人。チカゼはゴシゴシと、自分の袖で葵の目元を拭いてやる。


「あおいチャン、これ欲しかったのかなって思って。サプライズで買ったんだ」

「(こくり)」

「喜んでくれると思ったのに、泣かれちまったらオレらはどうしたらいいんだよ」


 そんなことを言う彼らに、葵は彼らの手を取って首を振る。


「違うんだ。違うんだよ。これは……本当に嬉しくって。泣いてしまっただけで」


 まさか、欲しいと思っていたものが手に入るなんて。思ってもみなくて。


「だ、だから。本当に嬉しい! 三人ともありがとう! 最っ高のプレゼントだよ!」


 涙は止まらないけれど、今できる目一杯の笑顔で感謝を伝えると、目を見開いた三人は、何故か猛ダッシュで葵から離れて準備体操をしに行ってしまった。追い掛けようとしたけれど、「今こっち来ないで!」とか「近寄んな!」と言われ、今度は違う意味で涙が止まらない。


「キサちゃん。わたしの顔はそんなに引かれるほど気持ちが悪かったんだろうか」

「え? そんなことあるわけないじゃん。あいつら見てみなよ」


 ぽんと肩を叩いたキサが指差したのは、残った男子四人組の方。何故かみんな、口元を押さえて唸っている。


「まさか、吐きそうなくらい気持ち悪かった……?」

「あいつらみんな、あっちゃんのとびっきりの笑顔が見られて、本当に嬉しいんだって」

「え?」

「ほら、さっきの三人見てみなよ。飛び跳ねてるよ」


 キサにそう言われて振り向くと、今度は嬉しそうな顔をしている三人を発見。遠くてよくわからなかったけれど、「喜んでもらえてよかったね」とか、そんな話をしているような気がする。


「……うん。わたしの気持ちが伝わったなら、それでいいや」

「うんっ! あっちゃんの気持ちは、痛いほどよく伝わった!」


 キサは葵にぎゅうっと抱きついたあと、三人に声を掛けに行っていた。